八女茶コラム

不発酵茶(緑茶)とは

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不発酵茶(緑茶)とは、どんなものなのでしょう。種類の違いなどを少し詳しく掘り下げてみましょう。

不発酵茶(緑茶)の中にもいくつか種類があることは以前の【お茶の種類と作り方の違いをご紹介します。】の記事で触れました。

今回は、そんな不発酵茶の主だった種類を紹介したいと思います。

 

煎茶

不発酵茶の中でも、一番みなさんに馴染みのあるものが「煎茶」だと思います。

普段、お茶屋さんで買ったり、ギフトで貰ったり、はたまたペットボトルの中身もこの「煎茶」です。

では、この「煎茶」とはなんなのか。

「煎茶」とは、日光を遮らずに栽培(露地栽培)し、新芽を摘み取り蒸熱→粗揉→揉捻→中揉→精揉→乾燥の工程で作られるお茶です。

ものによっては、1週間未満遮光した煎茶もあります。

遮光しないため、光合成によってカテキンの量も多く、甘味と渋み、爽やかさのバランスを楽しめるお茶です。

美味しい淹れ方にについてはまた別の記事でご紹介します。

 

深蒸し煎茶

通常の「煎茶」より、蒸し(蒸熱)の時間を2~3倍長くして作られた煎茶です。

蒸しの時間以外は、通常の煎茶と変わりはありません。

また、産地によって茶葉の厚みなどにも違いがあり、蒸しの時間も異なります。

どれくらいの時間以上蒸せば深蒸しという、全国共通の定義はありません。

蒸し時間が気になる方は、お茶屋さんに実際に聞いてみるのもよいかと思います。

 

かぶせ茶

「煎茶」と異なるのは、日光を遮断して栽培する点です。

日光を遮ることで、光合成を阻害し、旨味成分であるアミノ酸が苦味、渋みの成分であるカテキンへ変化するのを阻害します。

これによって、通常の煎茶よりも甘味や旨味の強いお茶になります。

玉露との違いは、遮光のために化学繊維をお茶の木に直にかけて覆う(直掛け)点です。

「玉露」と「煎茶」の中間に位置するお茶というイメージです。

遮光の期間も産地によって決まっていますが、大体3週間程度だと思います。

 

玉露

玉露の定義も産地によって違いがあります。

作り方はかぶせ茶と似ていて、日光を遮断して栽培し、摘採後は煎茶と同じ工程で作られます。

かぶせ茶との違いは遮光の方法です。

かぶせ茶は直掛け(お茶の木に直接寒冷紗などを掛ける)ですが、玉露はお茶の木と遮光用の藁や寒冷紗の間に空間を作ります(これを棚掛けと言います)。

上でも述べましたが、玉露の定義も産地によって違いがありますので、気になる方はお近くのお茶屋さんに聞いてみてください。

また、八女では現在「八女伝統本玉露」を「地理的表示保護精度(GI)」と「地域商標」に申請しています。

この「八女伝統本玉露」については別の記事詳しくご説明したいと思います。

 

抹茶(碾茶)

スイーツなどでは既に定番となった「抹茶」。

抹茶の原料は「碾茶」言って、この碾茶を石臼で挽くなどして粉末状にしたものが「抹茶」です。

玉露と同じく、棚掛けで遮光して栽培した葉を、蒸して揉まずに乾燥させることで「碾茶」が作られます。

しかし、海外では煎茶を粉末にしたものを「抹茶」と称して売られているのも現実です。

明確な定義を決め、このような偽抹茶の取り締まりを強化しようと業界も動いているのが現状です。

 

釜炒り茶

あまり馴染みがない方も多いと思われる「釜炒り茶」。

釜炒り茶」とは名前の通り、摘採した茶葉を釜で炒ることで発酵を止めたお茶です。これは煎茶の製造方法(蒸して揉む工程)が発明されるまで主流だった「中国式」の製造方法です。

栽培は煎茶と同じですが、摘採した茶葉を釜で炒り、その後に揉捻、水乾、締め炒り、乾燥という工程を経て作られます。

現在では九州の一部(佐賀など)でしか生産されていない珍しいお茶になっています。

 

蒸し製玉緑茶

蒸し製玉緑茶」という言葉を初めて耳にする方も多いと思います。

お茶屋さんでは、上記の「釜炒り茶」と合わせて「グリ」「グリ茶」などとも呼ばれています。

煎茶や玉露は、「精揉」の工程で茶葉は針のような形になり、これらを「伸び」と呼ぶのに対して、「精揉」の工程がなく、玉のような形をした「釜炒り茶」や「蒸し製玉緑茶」を「グリ」と呼ぶのです。

「蒸し製玉緑茶」は「釜炒り茶」と似ていますが、違いは始めの発酵の止め方です。

釜で炒る「釜炒り茶」に対して、「蒸し製玉緑茶」は「煎茶」などと同じく、蒸気で蒸す(蒸熱)ことで発酵を止め(殺青)ます。

その後、粗揉、揉捻、中揉、仕上再乾、乾燥という工程でつくられます。

「釜炒り茶」や「蒸し製玉緑茶」は全国的にも生産量は少なく、そのほとんどが佐賀や長崎、鹿児島や宮崎の一部で生産されています。

 

番茶

番茶」の定義はハッキリしておらず、各産地によって違います。

共通しているのは「主流ではない、”番外”のお茶」と言う意味で「番茶」と呼ばれているところです。

摘採の時期を外れたり、品質が落ちたものを「番茶」と呼ぶ傾向があり、地域によっては「ほうじ茶」のことを番茶と呼ぶこともあります。

 

ほうじ茶

ほうじ茶」とは、「煎茶」や「番茶」「茎茶(お茶の茎の部分、白折とも呼ばれる)」などを焙煎(焙じた)したお茶です。

焙煎することで「カテキン」が壊され、苦味や渋味が抜け、香ばしい香りがあり、口当たりがよくなります。

また「カフェイン」も少なくなっているため、胃への負担も少なく、小さいお子さんやお年寄り、妊婦さんなどが安心して飲めるため、医療機関や介護施設で水分補給の為にほうじ茶が飲用されていることもあります。

 

玄米茶

玄米茶」とは、「番茶(稀に煎茶)」に、もち米を蒸した後に炒ってきつね色になった「玄米」を混ぜたお茶です。

炒る際にポップコーンのように弾けた玄米(“花”と呼ばる)が混ざっているものがあったり、抹茶を混ぜて口当たりをよくしたものなどもあります。

香ばしい香りと口当たりが特徴です。

 

最後に

いかがだったでしょうか。

代表的な「不発酵茶(緑茶)」をあげてみましたが、かなりの種類があると知って頂けたと思います。

普段何気なく口にするお茶ですが、不発酵茶だけでもこれだけの種類があり、奥が深いのです。

この記事をきっかけに、少しでもお茶に興味を持ってもらえるとうれしいです。